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神戸地方裁判所 平成7年(行ウ)22号 判決

原告 望淡土地株式会社

被告 兵庫県西神戸財務事務所長

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、原告に対して、別表二1、3、5記載の各土地の取得について、平成五年二月一〇日付け(三件)、平成六年九月一二日付け、平成七年一月一〇日付けでした不動産取得税賦課処分をそれぞれ取り消す。

第二事案の概要

一  原告は、平成四年から平成六年までの間に、原告が所有していた土地を公共事業用地として公共事業団等に譲渡し、これと交換して右公共事業団等が所有していた土地を取得したが、被告が、原告に対して、右土地の取得について、地方税法(以下「法」という。)七三条の一四第八項により、譲渡した土地との差額に対して不動産取得税の賦課処分(以下「本件処分」という。)をしたので、原告が、本件処分の取消しを求めた事案である。

二  争いのない事実

1  原告は、昭和四七年一月二七日に設立された株式会社である。

2  原告は、平成四年九月二二日、建設省、本州四国連絡橋公団、阪神道路公団及び神戸市(以下、これらを併せて「本件事業者」という。)との間で、本件事業者が共同して施行する本州四国連絡橋事業の一部である垂水ジャンクション事業及びその周辺を整備する名谷ロードパーク事業(以下、これらを併せて「本件事業」という。)の実施に供する用地として、原告から本件事業者に対して、別表二2「平成四年度に譲渡した土地」に記載の土地を譲渡し、これと交換して、原告が本件事業者から、別表二1「平成四年度に取得した土地」記載の土地を取得する旨の合意をした(以下「交換契約」という。)。

3  被告は、原告に対して、平成五年二月一〇日付けで、原告が平成四年度に取得した土地について、次のとおり三件の不動産取得税賦課処分(以下「平成四年度分処分」という。)をした(以下、処分の内容等については別表一「本件処分等の概要」を参照)。

課税番号一四三五一 二七六四万二〇〇〇円

課税番号一四三五九 一三七六万三二〇〇円

課税番号一四四七五 一〇五八万四二〇〇円

4  被告は、課税番号一四三五一の賦課処分について、法七三条の一四第八項の定める額を控除して課税標準を減額し、税額を二七五四万九〇〇〇円とする更正処分をした。

5  原告は、兵庫県知事に対して、平成五年四月二日、平成四年度分処分について審査請求をしたが、兵庫県知事は、同年一一月一五日付で審査請求を棄却するとの裁決をし、同月一七日、右裁決書が原告に送達された。

6  原告は、平成五年四月二日、神戸市との間で、神戸市所有の別表二3記載の「平成五年度に取得した土地」と、原告所有の別表二4記載の「平成五年度に譲渡した土地」を交換する旨の合意をした。

7  原告は、平成六年九月一日、神戸市との間で、神戸市所有の別表二5記載の「平成六年度に取得した土地」と、原告所有の別表二6記載の「平成六年度に譲渡した土地」を交換する旨の合意をした。

8  被告は、原告に対し、平成六年九月一二日付けで、原告が平成五年度に取得した土地について、税額八四三万五七〇〇円とする不動産取得税賦課処分(以下「平成五年度分処分」という。)をした。

9  原告は、兵庫県知事に対して、平成六年一〇月一九日、平成五年度分処分について審査請求をしたが、兵庫県知事は、平成七年四月二七日付けで審査請求を棄却するとの裁決をし、同年五月二日、右裁決書が原告に送達された。

10  被告は、原告に対し、平成七年一月一〇日付けで、原告が平成六年度に取得した土地について、税額一〇八七万二四〇〇円とする不動産取得税賦課処分(以下「平成六年度分処分」という。)をした。

11  原告は、兵庫県知事に対して、同年六月三〇日、平成六年度分処分について審査請求をしたが、兵庫県知事は、同年八月二二日付けで審査請求を棄却するとの裁決をし、同月二九日、右裁決書が原告に送達された。

三  争点

1  原告が取得した土地は、法七三条の六第二項の適用又は類推適用により、不動産取得税の非課税土地になるか。

2  法七三条の一四第八項により、原告が取得した土地と譲渡した土地との差額について、被告がした算定方法は適正か。

四  争点についての当事者の主張

1  争点1(法七三条の六第二項の適用又は類推適用)について

(原告の主張)

法七三条の六第二項は、土地を強制収用された者がその代替補償として土地を取得した場合に不動産取得税が課されない旨を規定する。

原告は、本件事業の実施に伴って土地の収用を受けて、代替地を取得したのである。原告は、収用された土地について宅地造成の許可を受けることができなかったので、収用に応じるしか方法がなかったのであるから、右収用は実質的にみて強制によるものといえる。

したがって、原告の土地取得について、右規定により不動産取得税が課税されないのであるから、本件処分は違法である。

(被告の主張)

法七三条の六第二項は、土地収用法八二条の規定により替地をもって損失を補償された場合に、当該替地に対して課税しないとしたものであり、原告が取得した土地は、この規定の場合に当たらない。

また、法七三条の一四第八項は、公共事業を行う者に当該事業の用に供するために不動産を譲渡した者が当該譲渡した不動産に代わるものと道府県知事が認める不動産を取得した場合について、課税標準の特例を設けており、原告の土地取得はこの場合に当たる。したがって、原告の土地取得に法七三条の六第二項が類推適用される余地もない。

2  争点2(法七三条の一四第八項にいう差額の算定方法)について

(原告の主張)

(一) 法七三条の一四第八項は、公共事業を行う者に当該事業の用に供するために不動産を譲渡した者が当該譲渡した不動産に代わるものと知事が認める不動産を取得した場合の課税標準について、譲渡した不動産の固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産課税台帳に登録されていない場合には、知事が法三八八条一項の固定資産評価基準によって決定した価格)に相当する額を価格から控除すると規定する。

(二) 被告は、原告が譲渡した土地について、固定資産課税台帳に登録された価格(一平方メートル当たり二一円)を控除額にしている。

しかし、右価格は、公共事業予定用地としての評価によるものであり、実勢価格より極めて低く、法七三条の一四第八項にいう固定資産課税台帳登録価格に相当する額とはいえない。

(三) また、法七三条の二一第一項は、特別の事情がある場合に当該不動産の価格により難いときは、固定資産課税台帳に登録された価格によらずに、課税標準を決定すると定めている。

前記(二)の事情からみて、本件はこの特別な事情がある場合に当たるから、法三八八条一項により原告が譲渡した土地の時価を評価し直して、この時価を控除額にすべきである。

(四) したがって、被告の課税標準の算定方法は、法七三条の一四第八項の適用を誤ったものであるから、本件処分は違法である。

(被告の主張)

(一) 不動産取得税の課税標準は、不動産を取得した時における不動産の価格であり(法七三条の一三第一項)、この価格とは適正な時価をいい(法七三条第五号)、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、当該価格により決定し(法七三条の二一第一項本文)、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産については、知事が固定資産評価基準によって決定するものとされる(法七三条の二一第二項)。

(二) 平成四年度に原告が取得した土地の価格は、取得した平成四年九月二二日には固定資産課税台帳に価格が登録されていなかったので、法七三条の一四第八項により知事が法三八八条一項の固定資産評価基準によって価格を決定することになる。

そして、被告が算定した価格は、神戸市の区長が算定した平成四年度の固定資産評価見込額と一致し、右見込額は固定資産評価基準によって算定されており、平成五年度の固定資産課税台帳登録価格とほぼ同一で右価格を超えないものであること、固定資産課税台帳登録価格の据え置き制度からみて、平成四年九月二二日当時に固定資産課税台帳に価格が登録されていたとすれば、その価格は、例外的事由がない限り、平成五年度の固定資産課税台帳登録価格と同一になるのであり、本件についてこの例外的事由はない。

したがって、平成四年度に原告が取得した土地の価格について、被告がした算定方法は、固定資産評価基準に従ったものといえるから、適正である。

(三) そして、法七三条の一四第八項により控除すべき平成四年度に譲渡した土地の価格は、譲渡した平成四年九月二二日当時、固定資産課税台帳に価格が登録されていたのであるから、固定資産課税台帳登録価格(一平方メートル当たり二一円)を基に算定すべきである。

原告は、法七三条の一四第八項の「固定資産課税台帳に登録された価格に相当する額」について、登録価格が実勢価格より極めて低い場合には、その事情を考慮することができると主張する。しかし、相当する額とは、固定資産課税台帳登録価格であると解されるから、このような事情を考慮することはできない。

また、原告は、譲渡した土地について、法七三条の二一第一項但書が規定する「特別の事情がある場合」に当たると主張する。しかし、本件について適用される法七三条の一四第八項には、法七三条の二一第一項但書のような規定がないから、原告が譲渡した土地の価格について評価替えをすることはできない。

(四) 平成五年度分処分及び平成六年度分処分についても、被告は、平成四年度分処分と同様に、法七三条の一四第八項により、原告が取得した土地の価格を固定資産評価基準に基づき、原告が譲渡した土地の価格を当時の固定資産課税台帳登録価格に基づきそれぞれ算定し、この差額を基に課税標準を算定している。

(五) したがって、被告のした課税標準の算定方法は適法である。

第三争点に対する裁判所の判断

一  争点1(法七三条の六第二項の適用又は類推適用)について

1  原告は、本件処分に係る土地取得について、法七三条の六第二項の適用又は類推適用により不動産取得税を課税することができないと主張する。

2  法七三条の六第二項は、道府県は、土地収用法八二条の規定により、替地によって損失を補償された場合における当該替地の取得に対して、不動産取得税を課することができないと規定しているが、これは、不動産の取得が公共的事業に基づいて取得者の意思を問わずになされた場合に、右不動産取得に対して課税することは、不動産の所有権の移転に担税力を見い出して課税するという不動産取得税の性格に沿わないと解されるからである。

また、右規定による替地補償が、土地収用委員会が相当と認めて権利取得裁決をした場合に行われるものであり(土地収用法八二条二項)、替地が、土地の地目、地積、土性、水利、権利の内容などを総合考慮して、従前の土地に照応するものでなければならない(同条七項)ことに照らしてみると、替地が従前の土地に照応し、等価であると評価しうるのであり、したがって、替地補償の場合に非課税とされる実質的理由もあるといえる。

このようにみると、法七三条の六第二項により不動産取得税が非課税になるのは、強制収用の際に土地収用法八二条に基づき替地補償がなされた場合に限定されると解するのが相当である。

そして、本件における原告の土地取得が、本件事業者との交換契約に基づくものであることは当事者間に争いがないから、法七三条の六第二項の規定の場合に当たらないことは明らかである。証拠(甲九ないし二三)によれば、原告が譲渡した土地について、本件事業者が原告に対して、「収用証明書」等と題する書面を交付したことが認められるが、右書面は、土地の買取事由として「交換」と記載されていることなどからみて、公共事業用に買い取った土地であることを証明するものに過ぎないと解されるから、この事実により右認定は左右されない。

3  原告は、本件の土地取得に法七三条の六第二項が適用又は類推適用されなければ、公共事業に対して積極的に土地を提供する者は不動産所得税を課され、公共事業に不協力で強制的に土地を収用された者は不動産所得税を課されないことになり、不合理であると主張する。

しかし、公共事業に対して任意に土地を提供して代替地を取得した場合は、土地収用法八二条による替地補償の場合と異なり、取得した土地が提供した土地に照応しているとは限られないのであり、このことは、法七三条の一四第八項が、このような場合について、課税標準の特例として、取得した土地の価格から提供した土地の価格を控除すると定めていることからみても明らかである。原告の右主張を採用することはできない。

4  したがって、原告の土地取得について、法七三条の六第二項の適用又は類推適用により不動産取得税が課税されないということはできない。

二  争点2について

1  不動産取得税の課税標準は、不動産を取得した時における不動産の価格であり(法七三条の一三第一項)、この価格とは適正な時価をいう(法七三条五号)。知事は、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については、原則として当該価格により決定し(法七三条の二一第一項)、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産については、法三八八条一項の固定資産評価基準により決定するものとされる(法七三条の二一第二項)。

そして、法七三条の一四第八項は、公共事業を行う者に当該公共事業の用に供するため不動産を譲渡した者が、当該譲渡した日から二年以内に当該譲渡した不動産に代わるものと知事が認める不動産を取得した場合において、当該不動産の取得に対する不動産取得税の課税標準は、譲渡した不動産の固定資産課税台帳に登録された価格(固定資産の価格が登録されていない不動産の場合は、知事が法三八八条一項の固定資産評価基準により決定した価格)に相当する額を、取得した不動産の価格から控除すると定めている。

原告と本件事業者が、原告の土地を公共事業の用に供するために、平成四年から平成六年までの間に交換契約をしたことは当事者間に争いがないから、原告が取得した土地の課税標準は、法七三条の一四第八項に基づき、取得した土地の固定資産額から譲渡した土地の固定資産額に相当する額を控除して算定することになる。

2  平成四年度分処分について

(一) 取得した土地の価格

原告が取得した土地の価格は、固定資産課税台帳に価格が登録されている場合は、原則として右登録価格によって算定する。

そして、固定資産課税台帳に価格が登録されている不動産に当たるかどうかは、不動産取得税の課税標準が不動産取得時における不動産の価格とされているから、不動産を取得した日を基準に判断すべきであり、平成四年度に取得した土地については、平成四年九月二二日に交換契約により取得したことは当事者間に争いがないから、同日を基準に判断すべきである。

この点につき、原告は、交換の合意は平成元年又は遅くとも平成四年三月二七日にされていたのであるから、これらの時における価格を基準にすべきであると主張する。しかし、証拠(甲四ないし八)によれば、なるほど、平成四年九月二二日の際に同日に所有権を移転する旨の合意がなされ、平成四年三月二七日付けでも合意書が作成されていることが認められるが、右合意書は所有権移転の具体的時期が定められていないことからみても、交換に関する基本的方針を定めたものに過ぎないものと解するのが相当であるから、平成元年又は平成四年三月二七日を不動産を取得した日ということはできないのであり、原告の右主張を採用することはできない。

(1) 神戸市垂水区星陵台四丁目(以下「星陵台四丁目」という。)所在の各土地について(以下、別表二1記載の「平成四年度に取得した土地」を参照)

a 証拠(甲四四ないし五〇、乙三二ないし三八)によれば、星陵台四丁目の土地は、平成四年八月一三日、星陵台四丁目一七九番の四(以下「一七九番四」等という。)の土地から一七九番三四二ないし三五四の土地に分筆登記がなされ、同年九月二日、これらの土地の地目が学校用地から雑種地に変更されたこと、同日当時、法三四八条一項により非課税団体とされている神戸市が右土地を所有していたので、平成五年以降に固定資産課税台帳に価格を登録する扱いがなされたこと、同月二二日、原告が右土地のうち一七九番三四二、三四三、三四六ないし三四八、三五一、三五三の各土地を交換契約により取得したことが認められる。

そこで、原告が取得した右土地の価格は、交換契約がなされた平成四年九月二二日当時、固定資産課税台帳に価格が登録されていなかったのであるから、固定資産評価基準により決定されることになる。

b 固定資産評価基準によれば、雑種地について、ゴルフ場等の土地及び鉄軌道用地を除いて、雑種地の売買実例価格から評定する適正な時価によって価格を求める方法によるが、市町村内に売買実例価格がない場合には、土地の位置、利用状況等を考慮し、付近の土地の価格に比準して価格を求める方法(以下「近傍地比準方式」という。)によるものとされる。

証拠(甲四四ないし五〇、乙六の2、乙七の3、弁論の全趣旨)によれば、神戸市が、平成四年九月八日、原告が取得した土地の同年度の固定資産評価見込額について、近傍地比準方式により、付近の土地の路線価を一平方メートル当たり六万五〇〇〇円、雑種地による補正率を〇・六として算定したこと、被告は、平成四年度分処分に際し、この神戸市の固定資産評価見込額に準じて右土地の価格を算定したこと、神戸市が、平成五年二月二六日、この算定価格と同じ価格を同年度の価格として固定資産課税台帳に登録したこと、固定資産課税台帳登録価格の据え置き制度により、原則として平成三年度から平成五年度まで価格が据え置かれることが認められる。

したがって、被告のした土地価格の算定方法は、固定資産評価基準に従った適正なものであるといえる。

(2) 神戸市垂水区清水が丘二丁目六七番四七(以下「清水が丘二丁目」という。)の土地について

a 証拠(甲五一、乙三九)によれば、清水が丘二丁目の土地は、地目が宅地であり、平成二年五月一九日、神戸市都市開発公団に譲渡されたことにより法三四八条二項二号に基づき非課税土地になり、平成五年度に至るまで固定資産課税台帳に価格が登録されていなかったことが認められる。

そこで、右土地は平成四年九月二二日の取得当時、固定資産課税台帳に価格が登録されていなかったのであるから、この土地の価格は固定資産評価基準により決定されることになる。

b 固定資産評価基準によれば、宅地の評価は、各筆の宅地について評点数を付設し、当該評点数を評点一点当たりの価格に乗じて各筆の宅地の価格を求める方法によるものとされ、各筆の宅地の評点数は、標準宅地について適正な時価を定め、これにより路線価を付設し、この路線価を基礎として、画地計算法を適用する市街地宅地評価法によって算定するものとされる。

証拠(甲五一、乙九の2、弁論の全趣旨)によれば、神戸市が、平成四年九月八日、清水が丘二丁目の土地の同年度の固定資産評価見込額について、市街地宅地評価法により、路線価を一平方メートル当たり五万〇〇〇〇点とし、これに奥行価格逓減率〇・八五〔奥行一一六・〇六平方メートル、普通住宅地区であるが、大規模土地(地積八〇九六・〇四平方メートル)であることに鑑みて、中小工場地区に準じて算定〕を乗じて算定したこと、被告が、平成四年度分処分に際し、この神戸市の固定資産評価見込額に準じて価格を算定したこと、平成五年二月二六日、神戸市がこの算定価格と同じ価格を、同年度の価格として固定資産課税台帳に登録したことが認められる。

したがって、被告のした土地価格の算定方法は、固定資産評価基準に従った適正なものであるといえる。

(3) 神戸市西区北別府一丁目(以下「北別府一丁目」という。)の各土地について

a 証拠(甲五二ないし八四、乙四〇ないし七二)によれば、北別府一丁目の各土地は、地目が宅地であること、昭和六〇年一月二五日、代物弁済を原因として神戸市に譲渡されたことにより、法三四八条一項により非課税土地になり、平成五年度に至るまで固定資産課税台帳に価格が登録されていなかったことが認められる。

そこで、固定資産課税台帳に平成四年九月二二日における価格が登録されていなかったのであるから、右土地の価格は固定資産評価基準により決定されることになる。

b 神戸市が、北別府一丁目の各土地の固定資産評価見込額を算定するに当たり、路線価を次のとおり定めたことは、当事者間に争いがない。

北別府一丁目一七番一ないし一三の西北面に接する道路、同一九番一ないし五の南東面に接する道路、同二〇番一の東面に接する道路

三万五〇〇〇点

北別府一丁目一七番一三の北面に接する道路、同一八番一の南面に接する道路

三万〇〇〇〇点

北別府一丁日一八番一ないし六の東面に接する道路、同一九番五ないし七、二〇番五の南面に接する道路

三万五〇〇〇点

北別府一丁目一九番一及び七ないし九の北面に接する道路、同二〇番一ないし五の南面に接する道路

三万五〇〇〇点

北別府一丁目一七番一三、同一八番一ないし六の西面に接する道路

三万五五〇〇点

北別府一丁目一七番一、同一八番六、同二〇番一ないし五の北面に接する道路

三万五〇〇〇点

c 神戸市は、北別府一丁目の各土地について固定資産評価見込額を算定するに当たり、画地計算法を次のとおり適用したことも、当事者間に争いがない。

ア 北別府一丁目一七番一の土地

この土地は角地であるので、側方路線影響加算法を適用した。

基本となる評点数は一平方メートル当たり三万五〇〇〇点(正面路線価)であり、側方路線加算する一平方メートル当たりの評点数は、側方路線価一平方メートル当たり三万五〇〇〇点に側方路線影響加算率〇・〇七(普通住宅地区)を乗じて算定した二四五〇点である

したがって、一平方メートル当たりの評点数は三万七四五〇点になる。

イ 北別府一丁目一七番二、三、五ないし一二の土地

一平方メートル当たりの評点数は三万五〇〇〇点である。

ウ 北別府一丁目一七番四の土地

一平方メートル当たりの評点数は、正面路線価一平方メートル当たり三万五〇〇〇点に、間口狭小補正率〇・九九(間口七・一七メートル、普通住宅地区)を乗じて算出した三万四六五〇点である。

エ 北別府一丁目一七番一三の土地

この土地は角地であるので、側方路線影響加算法を適用し、不整形の程度を考慮して、不整形地補正率を〇・九とした。

基本となる一平方メートル当たりの評点数は、三万五〇〇〇点(正面路線価)に、奥行価格逓減率〇・九八(正面路線からの奥行距離二八・〇八メートル、普通住宅地区)、不整形地補正率〇・九を乗じて算定した三万一三一一点であり、側方路線加算する一平方メートル当たりの評点数は、側方路線価三万〇〇〇〇点に、奥行価格逓減率を〇・九九(側方路線に対する奥行距離二七・二六平方メートル)、側方路線影響加算率〇・〇七、不整形地補正率〇・九を乗じた一八七一点である。

したがって、この土地の一平方メートル当たりの評点数は三万三一八二点である。

オ 北別府一丁目一八番一の土地

この土地は、三方において路線に接する画地であるので、側方路線影響加算法及び二方路線影響加算法を適用する。

正面路線価は一平方メートル当たり三万五五〇〇点であり、側方路線加算をする一平方メートル当たりの評点数は、側方路線価三万〇〇〇〇点に、側方影響加算率〇・〇七を乗じた二一〇〇点になる。

そして、二方路線加算をする一平方メートル当たりの評点数は、裏路線価三万五〇〇〇点に二方路線影響加算率〇・〇三(普通住宅地区)を乗じた一〇五〇点になる。

したがって、この土地の一平方メートル当たりの評点数は三万八六五〇点になる。

カ 北別府一丁目一八番二ないし五の土地

これらの土地は、正面と裏面に路線がある画地であるので、二方路線影響加算法を適用する。

正面路線価は一平方メートル当たり三万五五〇〇点であり、二方路線加算をする一平方メートル当たりの評点数は、裏路線価に三万〇〇〇〇点に二方路線影響加算率〇・〇三を乗じて算定した一〇五〇点になる。

したがって、これらの土地の一平方メートル当たりの評点数は三万六五五〇点になる。

キ 北別府一丁目一八番六の土地

この土地は、三方において路線に接する画地であるので、側方路線影響加算法及び二方路線影響加算法を適用する。

基本となる一平方メートル当たりの評点数は三万五五〇〇点であり、側方路線加算をする一平方メートル当たりの評点数は、側方路線価三万五〇〇〇点に、奥行短小補正率〇・九九(奥行八・九四メートル)及び側方影響加算率〇・〇七を乗じた二四二五点になる。そして、二方路線加算をする一平方メートル当たりの評点数は、裏路線価三万五〇〇〇点に二方路線影響加算率〇・〇三(普通住宅地区)を乗じた一〇五〇点になる。

したがって、この土地の一平方メートル当たりの評点数は三万八九七五点である。

ク 北別府一丁目一九番一、五、七の土地

これらの土地は角地であるので、側方路線影響加算法を適用した。

基本となる一平方メートル当たりの評点数は三万五〇〇〇点であり、側方路線加算する一平方メートル当たりの評点数は、側方路線価三万五〇〇〇点に側方路線影響加算率〇・〇七を乗じた二四五〇点になる。

したがって、この土地の一平方メートル当たりの評点数は三万七四五〇点である。

ケ 北別府一丁目一九番二ないし四、六、八、九の土地

これらの土地の一平方メートル当たりの評点数は三万五〇〇〇点である。

コ 北別府一丁目二〇番一、五の土地

これらの土地は、三方において路線に接する画地であるので、側方路線影響加算法及び二方路線影響加算法を適用する。

基本となる一平方メートル当たりの評点数は三万五〇〇〇点(正面路線価)であり、側方路線加算をする一平方メートル当たりの評点数は、側方路線価三万五〇〇〇点に、側方影響加算率〇・〇七を乗じた二四五〇点になる。そして、二方路線加算をする一平方メートル当たりの評点数は、裏路線価三万五〇〇〇点に二方路線影響加算率〇・〇三を乗じた一〇五〇点になる。

したがって、これらの土地の一平方メートル当たりの評点数は三万八五〇〇点である。

サ 北別府一丁目二〇番二ないし四の土地

これらの土地は正面と裏面において路線に接する土地であるので、二方路線影響加算法を適用した。

基本となる評点数は一平方メートル当たり三万五〇〇〇点(正面路線価)であり、二方路線加算をする一平方メートル当たり評点数は、裏路線価一平方メートル当たり三万五〇〇〇点に二方路線影響加算率〇・〇三を乗じて算定した二四五〇点であるから、一平方メートル当たりの評点数は三万六五〇〇点になる。

d 神戸市が、以上のアないしサにより算定した一平方メートル当たりの評点数に地積を乗じて各土地の評点数を算定し、当該評点数に評点一点当たりの価格一円を乗じて、各土地の固定資産評価見込額を別表二1記載の「平成四年度に取得した土地」の「評価額」のとおり算定したことも当事者間に争いがない。

e 証拠(甲五二ないし八四、乙一〇の2、四〇ないし七二)によれば、神戸市垂水区及び西区区長が算定した平成四年度の固定資産評価見込額は、平成五年度の固定資産課税台帳登録価格とほぼ同一であり、同価格を超えないものであること、被告が、右固定資産評価見込額に準じて固定資産額を算定したことが認められる。

したがって、被告のした算定方法は、固定資産評価基準に適正に従ったものといえる。

(4) 以上によると、平成四年度に取得した土地の価格は、次のとおりである。

課税番号一四三五一の土地 六億九一〇五万二〇〇〇円

課税番号一四三五九の土地 三億四四〇八万一七〇〇円

課税番号一四四七五の土地 二億六四六〇万六六八九円

(二) 譲渡した土地の価格(別表二2記載の「平成四年度に譲渡した土地」を参照)

(1) 原告が取得した土地の価格から控除される譲渡した土地の価格は、法七三条の一四第八項により、譲渡した土地について固定資産課税台帳に登録された価格又は法三八八条一項の固定資産評価基準により決定した価格に相当する額である。

(2) 証拠(乙一、二、一七ないし二九)、によれば、平成四年九月二二日に原告が譲渡した土地は、神戸市垂水区名谷町字丸尾六四一番一(以下「六四一番一」などという。)の土地の一部及び六四一番七五の土地であったこと、同日当時の固定資産課税台帳には、六四一番の一の土地の価格が二四五万八八〇六円(地積一一万七〇八六平方メートル)、六四一番七五の土地の価格が四四万四八六四円(地積二万一一八四平方メートル)として登録されており、一平方メートル当たりの登録価格が二一円であったことが認められる。

そこで、平成四年度に譲渡した土地については、固定資産課税台帳に価格が登録されていたといえる。

(3) 証拠(乙一三、一五、一六)によれば、六四一番一の土地は、同年一一月二六日、一二万五〇二八平方メートル(実測面積一二万五九二七・八四平方メートル)に地積更正がされた後に、六四一番一並びに九一ないし一〇〇に分筆登記がされたこと、同年九月二二日に譲渡された土地はこの土地の内六四一番一並びに六四一番九三ないし一〇〇(実測面積合計九万一三九三・七一平方メートル)であったこと、六四一番七五の土地(実測面積一万九三五六・六二平方メートル)は、同年一〇月二二日、六四一番七五並びに六四一番八八ないし九〇に分筆登記がされたことが認められる。

被告は、譲渡した土地の固定資産課税台帳登録価格を、譲渡した当時の一平方メートル当たりの価格に、譲渡した土地の実測面積を乗じて算定している。この算定方法は、固定資産評価基準が一平方メートル当たりの評点数に地積を乗じて土地の価格を算定すると定めていること、固定資産課税台帳登録価格が固定資産評価基準によって算定されることに照らすと、適正なものといえる。

そこで、譲渡した六四一番一の一部の土地の価格は、次の計算式により一九一万九二六七円(一円未満切り捨て)になり、

計算式 21×91393.71=1919267

六四一番七五の土地の価格は、次の計算式により四〇万六四八九円(一円未満切り捨て)

計算式 21×19356.62=406489

になるから、平成四年度に譲渡した土地の固定資産課税台帳登録価格は、これらの価格を合計した二三二万五七五六円になる。

(4) 原告は、本件の交換契約が等価交換であることを前提にしたものであるにもかかわらず、譲渡した土地の平成四年度の固定資産課税台帳登録価格は、実勢価格より極めて低いものであるから、法七三条の一四第八項にいう右価格に「相当する額」とはいえないと主張する。

証拠(甲二五ないし四三、八五、八七、原告代表者本人尋問の結果)によれば、昭和四一年以降、本件で譲渡した土地について、原告が民間業者から、宅地造成等の目的から一坪当たり七〇〇〇円ないし三万円で譲渡するようにとの申出が数回あったこと、しかるに、右土地が本四架橋の事業計画用地になる可能性が生じたので、宅地造成等をすることができなかったこと、平成二年三月二六日に、原告が本四架橋事業団に対して六四一番の土地の一部を一平方メートル当たり七万一五〇〇円で譲渡したこと、本件の交換契約において、本件事業団から原告に対して、原告が譲渡する土地と取得する土地の差額として計約五億円を支払う旨の合意が成立したことが認められる。

しかし、証拠(甲八、五〇ないし八四、乙一七ないし二九、三二ないし七二、原告代表者本人尋問の結果)によれば、平成四年度に取得した土地は、地目が雑種地又は宅地、現況が住宅や工場などが隣接する平坦な土地であり、固定資産評価基準による算定価格が一平方メートル当たり四万円前後であったこと、これに対し、平成四年度に譲渡した土地は、地目が山林であり、現況もかなりの傾斜地であり、樹木のほとんどが雑木であったことが認められる。そこで、平成四年度に譲渡した土地の固定資産額は、これらの地目及び現況からみて、取得した土地の一平方メートル当たりの固定資産額四万円前後をかなり下回るものになるといえる。

また、証拠(甲一、二、四ないし八、二五ないし四三、八五、八七、原告代表者本人尋問の結果)によれば、前記の民間業者の譲渡申出額は、宅地開発等の目的から買取等を強く希望したことから算定された金額であること、本四架橋事業団への譲渡価格や交換契約における差額も、原告が譲渡した土地が本件事業を進める上で必要不可欠な土地であったことから算定された金額であることが認められるから、これらの価格が当事者間の自由な取引による適正な時価を裏付けるものということはできない。

そして、平成四年ころ、いわゆるバブル経済の影響により宅地、雑種地等の価格が極めて高騰していたが、これに対して山林等の価格はあまり変動しなかったことも併せて考慮すると、本件の交換契約が等価交換を前提になされたものということはできない。

さらに、原告が、神戸市の職員等から、本件交換契約に先立って、公共事業による土地収用なので非課税になるとの説明を受けたという原告代表者本人尋問の結果は、前記の認定事実に照らすと直ちに採用することはできない。

したがって、譲渡した土地の平成四年度の固定資産課税台帳登録価格が、実勢価格より極端に低く、法七三条の一四第八項にいう固定資産課税台帳登録価格に「相当する額」でないとはいえないから、原告の右主張を採用することはできない。

(5) また、原告は、譲渡した土地について、法七三条の二一第一項但書にいう「当該固定資産の価格により難い」「特別な事情がある場合」であるから、固定資産課税台帳登録価格によるべきではないと主張する。

しかし、右規定は、不動産を取得した場合の課税標準に関する規定であり、法七三条の一四第八項にいう控除額について、法七三条の二一第一項但書と同様の規定はない。また、法七三条の二一第一項但書の「当該固定資産の価格により難い」とは、当該不動産の固定資産税の賦課期日後に増築、改築、損壊、地目の返還その他特別な事情が生じた結果、右登録価格が当該不動産の適正な時価を示しているものということができないために、右登録価格を不動産の価格とすることが適当でなくなった場合をいうと解すべきである(最高裁平成六年四月二一日第一小法廷判決・判例時報一四九九号五九頁参照)。そして、本件について、賦課期日後に譲渡した土地の固定資産の価格により難い特別な事情が生じたことを認めるに足りる証拠はないから、法七三条の二一第一項但書を適用又は準用することはできない。

したがって、原告の右主張も採用することはできない。

(6) 以上によれば、原告が譲渡した土地について、法七三条の一四第八項に定める固定資産課税台帳登録価格に相当する額は、右(2)(3)で算定した固定資産課税登録価格である二三二万五七五六円になる。

(三) 税額

(1) 課税番号一四三五一の処分

課税標準は、右(一)で算定した原告が取得した土地の価格から右(二)で算定した譲渡した土地の価格を控除して算定することができるから、次の計算式により六億八八七二万六〇〇〇円であり、

計算式 691052000-2325756=688726000

(単位円、法二〇条の四の二第一項により一〇〇〇円未満は切り捨て)税額は、これに税率四パーセントを乗じて算定した二五七四万九〇〇〇円(法二〇条の四の二第三項により一〇〇円未満は切り捨て)になる。

(2) 課税番号一四三五九の処分

課税標準は、右(一)で算定した三億四四〇八万一〇〇〇円(法二〇条の四の二第一項により一〇〇〇円未満は切り捨て)であり、税額は、これに税率四パーセントを乗じて算定した一三七六万三二〇〇円(法二〇条の四の二第三項により一〇〇円未満は切り捨て)になる。

(3) 課税番号一四四七五の処分

課税標準は、右(一)で算定した二億四六〇六万六〇〇〇円(法二〇条の四の二第一項により一〇〇〇円未満は切り捨て)であり、税額は、これに税率四パーセントを乗じて算定した一〇五八万四二〇〇円(法二〇条の四の二第三項により一〇〇円未満は切り捨て)になる。

(四) したがって、被告の平成四年度分処分はいずれも適法である。

3  平成五年度分処分について

(一) 取得した土地の価格(別表二3記載の「平成五年度に取得した土地」を参照)

証拠(乙一二の2、七三、七四)によれば、原告が平成五年一〇月一日に取得した星陵台四丁目一七九番三四九及び同番三五九の土地は、法三四八条一項により非課税団体である神戸市が当時所有者であり、同日当時に固定資産課税台帳に価格が登録されていなかったことが認められるから、右取得した土地の価格は固定資産評価基準によって算定されることになる。

そして、証拠(乙一二の2、七三、七四)によれば、被告が右土地の同年度の固定資産評価額について、固定資産評価基準に従って、近傍地比準方式により、付近の土地の路線価を一平方メートル当たり六万七五〇〇点、雑種地による補正率を〇・六として、一平方メートル当たりの評点数四万〇五〇〇点を算定し、これに実測面積を乗じて土地の評点数、評価額を算定したこと、右評価額が神戸市の算定した平成五年度の固定資産評価見込額と一致することが認められる。

したがって、被告の算定方法は、固定資産評価基準に従ったものといえるから、適法である。

この方法によると、平成五年度に取得した土地の価格は、計二億一一二四万八〇〇〇円になる。

(二) 譲渡した土地の価格(別表二4記載の「平成五年度に譲渡した土地」を参照)

証拠(乙一)によれば、原告が平成五年一〇月一日に譲渡した神戸市垂水区名谷町字丸尾六四一番九一の土地は、同日当時に固定資産課税台帳に価格が登録されていたことが認められるから、この土地の価格は右登録価格である三五万三一七八円となる。

(三) 税額

平成五年度に原告が取得・譲渡した土地が、公共事業の用に供するために交換されたものであることは当事者に争いがないので、平成四年度分処分と同様に、平成五年度分処分に係る土地の課税標準も、法七三条の一四第八項により、原告が取得した土地の価格から原告が譲渡した土地の価格を控除して算定することになる。

そこで、課税標準額は、次の計算式から二億一〇八九万四〇〇〇円(法二〇条の四の二第一項により一〇〇〇円未満は切り捨て)になり、

計算式 211248000-353178=210894000

税額はこれに税率四パーセントを乗じて算定した八四三万五七〇〇円(法二〇条の四の二第三項により一〇〇円未満は切り捨て)になる。

(四) したがって、被告の平成五年度分処分は適法である。

4  平成六年度分処分について

(一) 取得した土地の価格(別表二5記載の「平成六年度に取得した土地」を参照)

証拠(乙七五ないし八〇)によれば、原告が平成六年九月一日に取得した星陵台四丁目一七九番三四四、三四五、三五〇、三五二の各土地は、法三四八条一項により非課税団体である神戸市が当時所有者であって、同日当時に固定資産課税台帳に価格が登録されていなかったことが認められるから、右取得した土地の価格は、固定資産評価基準によって算定されることになる。

証拠(乙一四、七五ないし八〇)によれば、被告が、右各土地の同年度の固定資産評価基準に従って、近傍地比準方式により、付近の土地の路線価を一平方メートル当たり一七万四〇〇〇点、雑種地による補正率を〇・六として、一平方メートル当たりの評点数一〇万四四〇〇点を算定し、これに実測面積を乗じて土地の評点数、評価額を算定したこと、右評価額が、神戸市の算定した平成五年度の固定資産評価見込額と一致することが認められる。

したがって、被告の算定方法は、固定資産評価基準に従ったものといえるから、適法である。

この方法によると、平成六年度に取得した土地の価格は、計五億四四三四万一六〇〇円になる。

(二) 譲渡した土地の価格(別表二6記載の「平成6年度に譲渡した土地」を参照)

証拠(乙一)によれば、原告が平成六年九月一日に譲渡した神戸市垂水区名谷町字丸尾六四一番九二の土地は、同日当時に固定資産課税台帳に価格が登録されていたことが認められるから、この土地の価格は右登録価格である三五万八一八〇円となる。

(三) 税額

平成六年度においては、法附則一一条の五の特例により、取得した土地の固定資産額の二分の一を乗じて得た価格が課税標準の計算上の価格とされる。そして、平成六年度に原告が取得・譲渡した土地が、公共事業の用に供するために交換されたものであることは当事者に争いがないので、平成四年度分処分と同様に、平成六年度分処分に係る土地の課税標準も、法七三条の一四第八項により、右価格から原告が譲渡した土地の価格を控除して算定することになる。

そこで、課税標準額は次の計算式から二億七一七一万二〇〇〇円(法二〇条の四の二第一項により一〇〇〇円未満は切り捨て)になり、

計算式 544341600÷2-358180=271812000

税額はこれに税率四パーセントを乗じて算定した一〇八七万二四〇〇円(法二〇条の四の二第三項により一〇〇円未満は切り捨て)になる。

(四) したがって、被告の平成六年度分処分は適法である。

第四結論

よって、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 辻忠雄 下村眞美 細川二朗)

別表〈省略〉

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